イーサリアムブロックチェーンのビジネスユースケースとは?

イーサリアム

イーサリアムブロックチェーンのビジネスユースケースとは?

2019 年 3 月 - 10 min read

イーサリアムのビジネス利用

イーサリアムのブロックチェーンは、その可能性から、多くの企業によってビジネスにも応用されようとしています。

JPモルガンやMicrosoftなど主要金融機関だけでなく、ブロックチェーンのスタートアップ企業やテクノロジー企業など多くの企業が、各産業の抱える問題を解決するために、イーサリアムのブロックチェーンの導入を行なっています。

本記事では、二回に渡ってイーサリアムのブロックチェーンを活用したビジネスにおけるユースケース紹介して行きます。

今回は、ビジネスユースケースの第一回として、

  • 銀行・金融サービス
  • 貿易金融
  • サプライチェーン

について、次回は

  • 行政
  • 再生可能エネルギー
  • 石油・天然ガス
  • 法律
  • 不動産

のユースケースを紹介していきます。

銀行・金融サービス

【問題】

  • コストの高さ

信頼性の提供、 アクセシビリティ、攻撃耐性、設備故障の即時対応などに多大なコストがかかっています。

例として、主要銀行は年に2億ドル以上の予算をサイバーセキュリティに費したり、口座のアカウント変更時に、複数の書類手続きが必要となる手間などが上げられます。

【ブロックチェーンの利用機会】

  • リスクの回避

全ての銀行がブロックチェーンの分散型トランザクションによる支払いを採用した場合、さまざまなリスクが回避されます。

たとえ何らかのシステムがダウンしても、国内の銀行間の支払いがストップすることはありません。

  • アクセシビリティの向上

直接的に取引することが可能になるので、二重支払いや詐欺などの可能性を減らすことができます。そして、ブロックチェーンの分散かつ書き換え不能な性質により、銀行からの規制報告などを簡素化することもできます。

【ビジネスユースケース】

  • トークンを利用したリアルタイム決済

イーサリアムブロックチェーンをベースとしたソリューション提供を行うブロックチェーン企業ConsenSysがスペイン最大の商業銀行グループであるサンタンデール銀行とタッグを組みました。イーサリアムブロックチェーンを利用することで、国内・国際間の決済が10~15秒で完了する換金可能なトークンシステムが可能になりました。

  • Khokaプロジェクト

南アフリカの中央銀行がイーサリアムブロックチェーンをベースとした決済システムの概念実証を行い、南アフリカの銀行間が従来導入していた即時グロス決済の99%のトランザクションが2秒以内で承認されるという成功をおさめました。

貿易金融

【問題】

  • 貿易システムの不統一性

急速なグローバル化により、貿易金融における記録追跡システムの標準化やデジタル化がより進んだ反面、国独自の規制・輸送水準、証明書の必要性など、異なったボーダーラインや司法権により貿易システムの統一がされていない状況となっています。

【ブロックチェーンの利用機会】

  • 合理的な取引プラットフォームの形成

ブロックチェーンにより、銀行・貿易商・監査会社や政府など、承認された機関だけがデータやトランザクションの記録を交換することができる安全で合理的かつペーパーレスなプラットフォームを提供することができます。

【ビジネスユースケース】

  • Komgo社による貿易システム統一

大豆と原油に関するユースケースが証明されたのち、15の世界的に主要な銀行や貿易会社が、「Komgo」というブロックチェーンベースの金融プラットフォーム会社に支援されている貿易金融ネットワークを公式発表しました。

エンドツーエンドの暗号化とクレジットのデジタル文字を通してユーザーデータを共有することで、「komgo」はマネーロンダリングなどを防ぐKYC(顧客確認)プロセスの確立や一時的にローンの担保として商品を所有する銀行への確実性を提供することが可能となりました。

サプライチェーン

【問題】

日用消費財や飲食物などすべてを支えている今日のグローバル規模のサプライチェーンは、非効率的でトレーサビリティが低く、そして搾取問題が頻発しています。

  • 非効率性

包装産業においては、輸送コストの半分が包装作業に費やされています。

  • トレーサビリティの低さ

2010年から2012年にかけてアメリカで行われたOceanaによる全国規模の調査では、海鮮食品は最大87%も偽装表示が行われていることから、トレーサビリティの問題の例として上げられます。

  • 搾取問題

主に電気機器の塗装に利用されるマイカと呼ばれる鉱物は、12歳以下の児童労働者から違法に採掘されているように、搾取されている層が存在することは明らかです。

【ブロックチェーンの利用機会】

  • 透明性の向上

ブロックチェーンのパブリックで永久的な取引記録により、原材料など生産の段階から消費者の手に届くまで、世界中の一連の物流の動きに関して透明性やアカウンタビリティーが保たれます。また、ITインフラを共有することで、供給業者から配達・製造・小売業者などのワークフローが簡素化され、チェーン上にあるお互いのアクティビティが可視化します。

【ビジネスユースケース】

  • イーサリアム上のサプライチェーンプラットフォーム「Viant」

今年はじめに、Microsoft社が協力し、イーサリアムのブロックチェーン上に、物流のトレーサビリティ機能をもったプラットフォーム「Viant」を立ち上げました。目的は、魚が持続可能なソースから捕獲されるよう保証するという、WWF(世界自然保護基金)発プロジェクトの展開補助をすることです。さらに「Viant」は巨大医薬品会社GlaxoSmithKlineと共に、科学者が使用する特許の相互的な追跡記録の実現と、製品がきちんと生産・運送され、そして正しい状態で保管されるよう働きかけています。

  • QRコード×スマートコントラクトによるトレーサビリティ向上

500社以上の供給者・配送業者からなる企業連合GenuineWayが、食品・酒類にQRコードを付け、合成食品の製造元を明らかにするスマートコントラクトを実装しました。

行政

【問題】

  • 行政管理の不確実さ

2008年に世界経済危機が発生して以来、各国の政府は投資家と消費者の信頼を強化するためのより高い決算能力やその報告の基準を求められています。

そのような状況下で、市民や企業は基本的なサービスにアクセスでき、製品を安全かつ適切な方法で市場に届けられるような確固たるデジタルインフラを必要としています。また政府は、公収入の使い道が効率的かつ効果的である証拠を示すべき状況にあります。

【ブロックチェーンの利用機会】

  • 手続きのペーパーレス化

ブロックチェーン利用によるいちばん即時的な利益は、政府の手続き書類がすべて安全なペーパーレスになることだと考えられます。つまり、政府機関は申請書、請求書、免許更新などの書類手続きをデジタルに処理することが可能になります。

  • システムの簡素化

イーサリアムの暗号化された台帳を通して、紙媒体手続きの負荷、処理時間、複製エラーを減らすことができます。ブロックチェーンが基盤となった個人管理システムを利用すれば、市民登録などが書類不要となり、ポータブル化も可能となります。

【ビジネスユースケース】

  • uPort社によるデジタル身元認証システム

uPort社は、プライバシーの保護を確保した身元情報の基準を定めたシステムを提供しています。uPort社はスイスのZugIDの開発を支援しました。ZugIDというのは、市民が信頼性が高く自立的な方法で電子政府が提供するサービスにアクセスできるものです。

  • 国家のブロックチェーンを活用した行政改革

土地登録・電子投票・エネルギー統計など、エストニアやドバイにおける政府のブロックチェーンの適用はすでに始まっています。

再生可能エネルギー供給

【問題】

  • エネルギー供給網の未発達

太陽電池や風力発電所は、再生可能エネルギーの豊富なソースとして活発化してきたにも関わらず、再分配や貯蓄するための設備が十分でなかったりと、エネルギー供給網に関する問題は解決されずじまいとなっています。

  • 不安定性

過電圧や鉄線の破損を防ぐために、各地域の主要機関などとのバランスを取り、生成量を抑えたり、時には生成ストップ要請のためにお金を支払う必要性もあります。また、こうした発電法は、天気や雲量に左右されるため、安定性に欠ける面もあります。

【ブロックチェーンの利用機会】

  • 再生可能エネルギー利用に対するインセンティブ作り

ブロックチェーンをベースとした供給システムにより、利用者にとって、エネルギー分配のストレージ容量を保有したり、地域でエネルギー交換を行なったりするための長期的なインセンティブを与えることが可能になります。

  • 発電コストの削減

現在稼働している設備のコストを抑えたり、支払い制度などの自動化により、リスクの蓄積を防ぐことも可能になります。

【ビジネスユースケース】

  • Grid+社によるエネルギー供給変革

Grid+社が小売エネルギー供給事業を運営するためにテキサス州の公共事業委員会から許可を得たことにより、利用者が全体のエネルギー料金情報にアクセスできるGRIDトークンの受け入れが開始します。イーサリアムブロックチェーンの信頼性の高い構造上で取引を行うことにより、レガシー (業務上必要だが、維持費が高い支払いソフト) を使った取引プロセスの運営負荷を減らすことができます。

石油・天然ガス

【問題】

  • システムの不透明性・非効率性

再生可能エネルギー開発が活発化している一方で、エネルギー発電と日々使用される多量の石油製品のために、原油へのニーズはいまだに存在し、今日の経済ではもっともグローバル規模で貿易が行われている物の一つですが、透明性や効率性の面で多くの問題を抱えています。

具体的には、石油・天然ガス会社は現在、貿易のデータ管理や追跡の際に、専売的なシステムを利用しており、このような中央集権的ITインフラは維持費も高く、ハッキングされ一時不能になったりといった現状です。

  • 利用最適化の必要性

石油・天然ガス産業は利益と赤字が隣合わせな産業であるため、石油利用の最適化も重要な課題となっています。

【ブロックチェーンの利用機会】

  • コスト削減

ブロックチェーン利用により、維持・アップデート・貿易システムのセキュリティ強化に関するコスト削減のほか、労働力・データ管理・データの可視化などのコストも減らすことができます。

  • 機密情報の保護

現在、貿易会社にとって、専売データや貿易方法などの情報が競争力のカギとなっており、イーサリアムの許可制・プライバシー機能により、それらの機密データを漏らすことなくひとつの安全なプラットフォームを通して取引することが可能になります。

【ビジネスユースケース】

  • 石油・天然ガス産業の変革

Ondiflo社は、ConsenSys社とAmalto社の合同ベンチャーで、石油・天然ガス産業におけるBtoBの統合を牽引する企業です。

2018年2月にローンチされて以来、Ondiflo社は2つの解決策に集中してきました。1つ目は石油・天然ガスのステークホルダー間で連合を形成すること。2つ目は、身元・承認・データの整備・支払い制度の確立などの調和を容易にするようなサービスの提供を行うことです。

法律

【問題】

  • 曖昧かつ複雑な法取引

現在の私たちの世界は、法と契約を通した仕組みで成り立っています。契約や協定が土・粘土に記録される時代が終わってから、司法手続きは前例から確立したテンプレートを使って作成され、訴訟時の曖昧さやさらなるリスクを引き起こすようになりました。コンマの位置などの簡単なミスが、裁判の進捗におおきく影響することもあります。

  • セキュリティの甘さ

いったん法的契約が編集や承認を終えると、契約者間でインクを使ったサインの取引が行われますが、大きい契約だと、重なる専門家の関与が必要となり、複雑な取引の完了が遅れてしまいます。未承認の契約データがメールボックスに放置されたり、ただのキャビネットに紙媒体の書類が保管されたりと、無防備な契約書類の管理はセキュリティ上非常に危険です。

【ブロックチェーンの利用機会】

  • 法取引の簡素化

法的書類をスマートコントラクトに組み込み、法的契約の制作・施行・仲裁に関する書類の確実なテンプレ化が促進されます。

  • セキュリティの向上

公式に承認・暗号化されたブロックチェーンベースの取引の土台機能であるパブリックキーの暗号化により、複雑なペンと紙の署名システムから安全な電子署名システムへの取替が可能になります。

【ビジネスユースケース】

  • スマートコントラクトによる法取引

スマートコントラクト上での法的契約を可能にした最初のプロジェクトである、OpenLawが、制作・施行・そして法的契約のストレージ管理を構築しています。OpenLawでは、イーサリアムのスマートコントラクトを利用することで、誰もが契約を管理・参照したりすることができます。

不動産

【問題】

  • アクセシビリティや流動性の低さ、取引コストが高い

現在の不動産市場では、不動産売買の取引時に、ブローカーや視察者など、さまざまなエージェントから手数料を吸い取られるため、不動産の売買はコストが高く、また時間がかかり複雑になってしまうため、流動性が低くなってしまいがちです。

【ブロックチェーンの利用機会】

  • 不動産取引の簡素化

イーサリアムの分散的構造とスマートコントラクトが機能的に作動すると、不動産取引における複数の仲介者を通す必要性がなくなり、家賃収入の支払いが自動化されることも可能になります。

  • 今までにない不動産の投資システム

イーサリアムのブロックチェーン上に不動産を絡めたトークンを発行することで、オーナーは以前はただひとつの分解不可能な巨大資産であった不動産を、ほとんど無限に分解することができ、投資家の多様化を促します。

【ビジネスユースケース】

  • 不動産投資の新しいプラットフォーム

ConsenSysはDubai Propertiesと提携を組み、暗号化した安全なデジタル署名を用いることで、設計・建設・販売までの不動産記録を追跡するブロックチェーンプラットフォームを開発しました。それを実行するConsenSysからできたベンチャー企業、Meridio社は、個々の財産をイーサリアムブロックチェーン上のデジタル共有可能な財産に転換します。認可された投資家は、そのMeridioプラットフォーム上でトークンを購入し、そのトークンが財産共有の証となり、トークン保有量の比率に基づいて、不動産収入が得られる仕組みとなっています。Meridio上の不動産市場の情報は投資家たちに共有されるため、保有財産や取引プロセス、リアルタイムで財産のデータ分析ができます。投資家たちは、少ない資金源・少ない手数料で投資可能なため、不動産における流動性もあげることができます。

まとめ

以上、イーサリアムブロックチェーンが活用されたビジネスユースケースの紹介でした。このように、イーサリアムブロックチェーンはすでに様々な産業のビジネスで応用され始めており、大きな可能性・将来性を秘めていることは間違いありません。多様な産業への応用が可能であり、各産業のもつ根本的な課題を解決していくこのイーサリアムブロックチェーンは、今後さらなる変革を起こしていくことでしょう。


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