ブロックチェーンが促進する新たな4つの保険ビジネス【保険×ブロックチェーン #3】

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ブロックチェーンが促進する新たな4つの保険ビジネス【保険×ブロックチェーン #3】

2019 年 3 月 - 5 min read

これまで、連載「保険×ブロックチェーン 」にて、第1回ではそもそもの保険制度の確認と期待されるブロックチェーン活用の概要紹介を行い、第2回では実際に始められている活用事例を紹介しました。

最終回となる今回の記事では、新たにブロックチェーン活用によって促進される4つのあたらしい保険ビジネスの可能性を紹介していきます。

パラメトリック保険 -Parametric Insurance

パラメトリック保険(別名:インデックス保険)とは、“規定の条件を満たした際に自動的に保険金が支払われる仕組み”のことを指します。

従来の保険であれば、事故や病気などの何らかの損害が起こった時に、保険会社にそれを申告し、煩雑な手続きを行った後、保険会社からの審査結果の程度に応じた保険金を受け取るというフローを経ていました。

一方、パラメトリックの語源は“パラメーター”にあり、たとえば地震のマグニチュードや降水量、飛行機遅延など、定量的に測定できるものに対して、規定(Parametric Trigger)に達した際に自動的に保険金を支払うというシステムをスマートコントラクトを使用する事によって可能にしています。

現時点における課題としては、オラクルの信用問題や、保険金が事前に定められた額しか支払われない点などが挙げられるでしょう。まだ小規模の領域における実用化しか進んではいませんが、Parametric Triggerをどのように算出・規定すべきかなどの研究も現在各企業により盛んに進められており、より大規模な展開が近いともされています。

パラメトリック保険に特化し取り組んでいるETHERISCという企業は、既に飛行機遅延の保険商品を発表しており、今後さらに穀物、ハリケーン、暗号資産、社会保険などの領域においても現在商品開発中であることを公開しています。

P2P 保険 -Peer to Peer Insurance

P2P保険とは、一言で言えば“リスク・ニーズの一致する人たちのグループで、まとめて保険を購入/作成する仕組み”のことを指します。

もう少し具体的に見ていきましょう。P2P保険を申し込もうと思った場合、まずソーシャルメディアやプラットフォーム等を活用して、共通の課題を抱えた人たちを募り少数のグループを組みます。そのメンバーで少額の資金を拠出してその資金の一部を運営者に支払い、メンバーに不意の事故が発生したらプールしていた資金から払い出す、というのが基本的なモデルです。

少人数のグループを組ませ社会性を作ることや、指定期間のうちに保険金が使われなかった場合そのまま次回に持ち越せるなどのインセンティブをつける事により、従来の保険金詐欺などの課題を解決する可能性も示唆されており、またニッチなニーズに対する保険のカスタマイズ商品などを展開していくことも期待されています。

P2P保険は、ビジネスとしてあたらしく開発が進められている分野ではある一方、“仲介業者を無くし仲間内で必要な分だけ保険金をプールする”という、保険の原点である仲間内の相互扶助の仕組みであるという点で期待をかけられています。日本では未だ法整備がなされておらずビジネス化が正式には出来ないものの、海外ではすでに大衆にも受け入れられ始めており、その市場規模は現在の70億ドルから2025年には1兆ドルにまで達するとも言われています。

今すぐにブロックチェーンを用いることは難しい領域ではありますが、今もブロックチェーンを用いた取り組みを続けている企業としてteambrellaが挙げられます。また、日本においてもJustInCaseがP2P保険×ブロックチェーンの領域に今後取り組んでいく事が期待されています。

オンデマンド保険 -On Demand Insurance

オンデマンド保険とは、ユーザーの要望に合わせた少額短期保険であり、言い換えれば、好きな時に好きな期間だけ保険をかけることのできる仕組みのことを指します。オンデマンド保険もP2P保険と同じくまだ日本では大きく展開されていないものの、海外では“保険離れ”していると言われるミレニアル世代の新たなニーズを掘り起こすビジネスモデルとして注目されています。

たとえば旅行に出かける1週間の間だけ一眼レフに保険をかけておいたり、撮影につかう30分間だけドローンに保険をかけたりなど、スマートフォン上の数タップで保険のオンオフを切り替えることができ、従来の損害保険と比較して格段に敷居の低く設計されたUI/UXが特徴です。

オンデマンド保険が今よりさらに展開されていくためには、これまで以上にデータ共有から保険金支払いまでの素早さが求められると言われており、そこに対しブロックチェーン上でのデータ共有とスマートコントラクト活用が期待されています。

マイクロインシュアランス -Micro Insurance

マイクロインシュアランスとは、開発途上国の低所得者層向けに設計された、低価格・低コストで提供される保険を指します。低所得者向けの金融サービスとして、マイクロファイナンスの取り組みは有名ですが、それと似た思想を持つあたらしい保険の仕組みです。従来の保険との基本的な違いは、以下の図で表されます。

保険会社Swiss Reの調査によれば、現在保険商品にアクセス出来ていない層は約40億人いるとされており、そしてその潜在的市場規模は400億USDに上るとも言われています。従来の保険商品は世界規模で見れば富裕層しかアクセス出来ないものであり、1日4ドル以下の生活を強いられる40億人の人々には保険が適用されることはなく常にリスクに晒され続けています。

その社会的意義からも、またその市場性からもマイクロインシュアランスは注目を浴びています。しかし一方で、低廉な保険料にコストが見合わない(保険になじみがなく顧客ロイヤルティが低いため、契約獲得・管理などにコストがかかる)ことが市場拡大の一つの壁となっており、可能な限り業務コストを抑えることが求められる保険モデルでもあります。そこで今マイクロインシュアランスの領域では、パラメトリック保険などとかけあわせて発展途上国に特化した保険商品の研究も進められています。

Swiss Reは実際にアジア・アフリカの農家に対し、気候被害に対する農業保険として、天候インデックス保険(パラメトリック保険)を提供しています。アフリカの農家の保険加入率は1%以下とも言われており、今後さらなる普及を目指しスマートコントラクトの活用にも取り組んでいるとされています。

まとめ

技術進化の煽りを受け、金融・保険業界は他の業界以上に、今後数年で大きく構造革新が起こる領域だとも言われています。

コンサルティングファームのPwCが保険業界の重役たちに行った調査結果によれば、44%の人たちが “In the next five to ten years, most existing insurers will not survive, at least in their current form. ほとんど全ての既存の保険会社は今後5-10年を生き延びることが出来ない。少なくとも現行の保険の形ではなくなる。”と回答したとされています。そして業界の構造革新に大きく寄与する技術として、ブロックチェーンは既にその可能性を証明し始めています。

今回紹介した保険ビジネス例は、現時点で大衆に受け入れられているサービスはそれほど多くなく、今後どのスタイルの保険が10年後の覇権を握っているかは予測するのが非常に困難になっています。しかしその全てのモデルにおいてブロックチェーン活用は期待されており、保険×ブロックチェーンは今後も注目して追っていくべきトピックと言えるでしょう。


参考